その声について
そもそものきっかけを思い出すのは今も恥ずかしい。…夢に彼が出てきた。それだけだ。本当の本当にそれだけなのだ。夢に出てきた人間に焦がれるなんて、恋に恋する乙女ではないのだからと呆れられるだろうし笑われるだろう。自分でも笑ってしまうくらいだ。だ…
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祈り、のち
眠りにつく前に忠三郎は神のもとに跪く。胸にかけた十字架を手に、何かを呟いて頭を垂れている。与一郎がいても変わらないその習慣は、神秘性をこめて美しくあると同時に、もはや与一郎の嫉妬心を的確に煽ってくるものでしかなかった。忠三郎が何かにすがって…
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莫迦げた話
莫迦な話だ。本当に、莫迦げた話。「忠三殿は長生きに向いておりませんなぁ」酒の席でのこと。どうしてそんな言葉が出たか覚えていないが、たしかに皮肉を込めて言ったはずだ。老いて死を待つだけの存在になるよりも、忠三郎という男は若いまま、あっさりとこ…
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【R18】輝く星の落ちる日の
年齢差というものはあまり気にしたことがなかったが、これはどうしたものか。若者の気持ちがわからんと一蹴するほど歳をとったつもりはないのだが、この若い義弟には日々驚かされる。「どういうつもりだ」与一郎がそういうと、右衛門は明らかに困った顔をした…
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SSまとめ
貴方は与一郎×右近で『愛してみろよ』をお題にして140文字SSを書いてください。https://shindanmaker.com/375517「隣人を愛するとは、どういう意味なのでしょうか」聞き齧りの知識だ。意味なんかない。右近を抱くことに…
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いつかあなたに似た人が
改宗してしばらく言われたことは、教義でも救いでもなく右近との関係のことだった。「"右近の門徒"になったのであろう」口々にそう言う彼らに悪意がないことは知っている。彼らにあるのはたったひと匙の好奇心だ。右近が忠三郎に何度もしつこく勧誘をかけて…
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黒歴史(閲覧注意)
『Belief』神に祈る姿。敬遠な姿勢。博愛慈悲平和馬鹿馬鹿しい。純粋にそう思っただけだった。だから、邪魔してやろうと思った。目の前には眉をひそめ、嫌悪感をあらわにしている「友人」が一人。袖に隠れてはいるが拳を握り締めているのだろう、怒りを…
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【R18】蜘蛛の巣を壊して
もう何度目だろう。数えるのも疎ましくなってしまった。与一郎が右近の体を抱くようになってから、一年ほどたった。きっかけは思い出せない。記憶という川に靄がかかったように不明瞭だ。…嘘だ。本当は忘れられない。忘れようはずがない。与一郎と最初に過ご…
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SSまとめ2
十字架あきらめる為に切支丹になった、なんて聞いたら、右近は怒るだろうか。一度、言ってみたかった。あなたをあきらめる為に、神に跪きました、と。「飛騨殿は不思議な方です。ここまでわたしの心を受け入れてくださった方はいらっしゃいません」嬉しそうに…
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拝啓、楽園の外より
彼の言葉を借りたとすれば、彼は一度死んでいる。死んだ人間は強い。生きている我々は常に自らの影に繋がれ、ただただ怯えるしかないだろう。だが彼にはそれがない。繋ぎとめるものをなくしたものは、あるがままに執着し、あるがままに求め、あるがままに手に…
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初夢のはなし
それぞれに初夢がある初夢は割と最悪な夢だった。いや、それはもうどうでもいい。夢なんて大抵支離滅裂なのだから、それが自分にとって都合が良いものなのか悪いものなのかくらいでしか計れないだろう。吉夢とか凶夢なんてものはそれの最たるものだ。与一郎が…
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【R18】毒の縛め
「可哀想なのでこうして差し上げます」与一郎はそう言うと、右近の弓のようにしなやかな腕を縛り上げた。と言ってもどこにも拘束はされていないし、右近がその気になれば簡単に解ける程度のものだった。「こうすれば、言い訳ができるでしょう?」誰かに見せる…
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