【R18】命ばっかり
一体いつからこんな関係になっていたのだろう。軽口をたたいては笑って、その所作の美しさに心を躍らせて、聖堂でうたを歌い、時には悲しみ、怒りをあらわにして……心のすべてを通じ合わせることができなくても、それだけで右近は満足だったはずだったのに。…
R18,創作戦国,細川忠興,蒲生氏郷,高山右近
毒の豪雨
雨が降っている、それも大粒の雨だ。声を押し殺し与一郎の指の動きに意識を尖らせ、与えられる甘やかな刺激に耐える右近を見かねた天の情けなのか、それとも罪人を裁く鉄槌なのかは知る由もない。「この土砂降りだ、きっとあなたの声なんて掻き消えてしまうで…
R18,創作戦国,細川忠興,高山右近
おどる長春花
#1 あの青空と僕らについて(あるいは与一郎と記憶を取り戻した康之の話)与一郎には記憶がある。振り切ろうにも消え失せない記憶が。それはある朝のことだった。あの最期の手紙を受け取った日。近日出向いたします……今でもそらで言える。実はこの記憶で…
古田織部,松井康之,現パロ,細川忠興,織田有楽,蒲生氏郷,高山右近
三十二歳の別れ
「もう終わりにしよう」既に聞き飽きたその言葉に、与一郎は閉じていた目をゆっくりと開く。声の主を辿って視線を投げると、忠三郎はこちらに背中を向けていた。少し苛立たしい。そう言う大事なことはきちんと向き合って目を見て話すものだろう。こんな時にこ…
創作戦国,細川忠興,蒲生氏郷
人間だった
菊の花が枯れはじめた。切り戻しをいつにするかなどというどうでもいい会話を聞いた。冬のあいだ土の中で、新たな芽はどのような世界を目にするのだろうと、やはりどうでもいいことを考えていた。右近が死んで三年経った。彼が寄越した手紙を眺めることはしな…
創作戦国,細川忠興,細川立孝,高山右近
I’ll be your home
本当は全て知っていたのかも知れない。自分のこれからを。本当は全て知っていたのかも知れない。与一郎の本当の気持ちを。「お前と恋人同士だったのならどれだけ良かっただろう」「随分と寒い冗談を言う」そのやりとりの虚しさと言ったらなかった。満月が憎た…
創作戦国,細川忠興,蒲生氏郷
夢いずる地
夢いづる地天を指して誓うことは罪であり、また地を指して誓うことも同じく罪だ。そこは主たる神の玉座であり、足を置くところであるからだ。長い船旅によるものか、右近の体は目的地である流刑の島にたどり着いたころにはその命の灯を燻りつつあった。異国の…
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原罪、これから
彼との出会いは、まだ幼い忠興にとって眩しすぎるものであった。彼が父と穏やかに話す笑みの中に力強い芯を感じては、憧れをもって眺めていた。忠興が……多くの子供がそうであるように……大人の会話に割り込んでも、子ども扱いせず話を合わせてくれた。それ…
明智光秀だったはずの妖怪がなんやかやあって細川家を籠絡する話創作戦国,明智光秀,細川忠興
汝、まだ名もなき毒
光秀と関係する以上、彼の娘である珠子を抱けなくなるのではないかという畏れもあった。しかしその心配は杞憂だった。何故か珠子への欲情は消えなかったどころか、むしろ興奮さえした。それが彼女の実父に対する歪な欲望であったのことは間違いないだろう。し…
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見知らぬ共存者
明智光秀が生きているという噂は、忠興をそれなりに動揺させた。直接その噂を聞いたことはない。きっと皆、忠興が彼の娘婿なことを気にして接しているからだろう。しかし、それでも耳に入るのが噂というものだ。そういうこともあって、ただの悪趣味な噂にすぎ…
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【R18】雲を霞と、散りうるもの
「教えを棄てないのならばここで死ね。それすらも拒むのならば、お前の目の前で子供たちを一人ずつ殺す」それは自分でも笑ってしまうくらいの稚拙な脅し文句だった。こんなことをしたところで、彼女の父親は変えられないし、それらに惹かれる忠興が変わるわけ…
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青空に星いっぱい【小ネタ詰め合わせ】
彼のことを詳しく知る者は少ない。武蔵国のさる寺の住職になるまでの経歴はおそらく本人しか知らないのではないだろうか。それをあまり詮索するのも野暮ではあるし、寺に入るということはそういうことだ。だから家康の側にいる彼の声を聞いた時の忠興の反応は…
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