溜息と指先と
						
						飢えた子供ならいくらでも見てきた。身体の飢えも、精神の飢えも同様に。彼らの不幸を業と切り捨てるのは簡単だ。ある意味では光秀もたくさんの命を流れるがままに見送ってきただけなのだろう。手を差し伸べたところで、彼らは光秀の手にも気がつかない。救い…						
						
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					没ネタ
						
						そういえば、忠興には心当たりはあった。ある時光秀に声をかけられ、振り返ると……彼はとても悲しそうな顔をして、こう言った。「いや、なんでもなかった。すまない」そんなことが幾度かあった。気にしないようにしていた。いつも彼はどこか寂しそうに、泣き…						
						
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					ときには桔梗も踏む
						
						「桔梗か」貴人口から入るなり家光は柱の花に目をやってそう言った。興味があるわけではない。誰にも望まぬ過去があるものだ。家光にだってある。誰にもそれを知らせずにいるだけで、触れられたくない過去など普遍的に存在するではないか。天海はそんな家光の…						
						
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					濁れる水を
						
						ある時、江戸から離れない藤堂高虎を細川忠興がこう笑ったと言う。「和泉のたわけが、江戸の凝った水など飲んでいられるか」人の噂とはまことに勝手なものだ。人と人の間の水を好きに泳いでは、姿を変えるのだ。受取手の都合の良く形を変えに変えて、たどり着…						
						
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					滅びゆく者には愚かな言葉
						
						忠興はそれから暫く体調を崩した。もとより体は強くはない。臥せっている彼を心配して何人か見舞いの使者が来たが、会いたくないので帰した。本当に誰にも会いたくなかった。そんな忠興が、会わざるを得なかったのが蒲生氏郷だった。氏郷は自らやってきた。だ…						
						
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					明日晴れたら
						
						右近は晴れの日が嫌いだった。雲が厚く立ち込め、今にも雨が降り出しそうな気候が好きだと言ったら、友人たちに怪訝な顔をされた。潔癖の右近殿らしくない、雨が降っては泥が跳ね汚れるではないかと。潔癖かどうかはさておいて、彼らは一つ勘違いをしている。…						
						
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					ある恋
						
						それまで右近は自由に生きてきたと言っても過言ではなかった。家族を持ち、領地を持ち、幸せに生活していた。大掛かりな復活祭もやった。信仰とは生活そのもので、身に染みているものだ。それに抗わず生きることに誇りすら抱いていた。だから神の御名の下に、…						
						
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					正夢と現
						
						これが夢なら悪夢だろうか。これが夢なら正夢になるだろうか。これが夢なら…「どうして」そう呟く与一郎を、忠三郎は愕然と見下ろすことしかできなかった。与一郎は顔を背けその目の色すら伺うことはできない。傷を舐め合うわけではない。そんなつもりで抱い…						
						
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					正しい涙
						
						初夏の日差しが寺の縁側に腰掛ける忠三郎を容赦なく照らした。新緑の影が淡くなっては浮かび濃くなっては沈んでゆくのを、じっと見つめてはため息を漏らす。「あまり外にいてはこの暑さは毒になりますよ」そう言って茶を持ってきたのはここの僧侶だ。もう十年…						
						
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					十字架
						
						あきらめる為に切支丹になった、なんて聞いたら、右近は怒るだろうか。一度、言ってみたかった。あなたをあきらめる為に、神に跪きました、と。「飛騨殿は不思議な方です。ここまでわたしの心を受け入れてくださった方はいらっしゃいません」嬉しそうに語らう…						
						
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					Crossroad
						
						「どうして」この国を出るまであと僅かとなった夜明けごろ。すべてを捨て、すべてを遺してここを後にしようと、方々に形見分けを済ませ、海に浮かぶ朝日を眺めに外に出た右近はその姿を見て、思わずそう口走ってしまった。目の前に広がる深い海のような色の目…						
						
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					獅子の妹は虎
						
						とらは昔から兄に憧れていた。いや、言い方が悪い。……昔から、兄が憎かった。男の兄が憎かった。もしも兄を殺して自分も死ねば来世は男に産まれられるというのなら、とらは喜んで兄を殺して自分も死ぬだろう。それくらい、男である兄を、そして女である自分…						
						
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