永井尚政

我が左手

この手は結局何を守ったのだろうか。忠勝は、己が手を見ていた。分厚い手は歳をとるごとにごつごつしだし、硬くなった皮膚は木の皮のようだ。将軍家光は、忠勝のことを自らの左手と称した。彼の死後、遺された幼い将軍を守るのに奔走したこの手は、もはやその…

ひまわり

油照りの中、国元から上洛した折のこと。吉田の邸で一息ついた頃に忠興は言伝があるということを聞いた。淀の永井尚政が花をいくつか贈りたいとのことで、特に時期は待たないが数奇で使って欲しいとのことであった。尚政は若くして老中まで上り詰め、今は畿内…

青空に星いっぱい【小ネタ詰め合わせ】

彼のことを詳しく知る者は少ない。武蔵国のさる寺の住職になるまでの経歴はおそらく本人しか知らないのではないだろうか。それをあまり詮索するのも野暮ではあるし、寺に入るということはそういうことだ。だから家康の側にいる彼の声を聞いた時の忠興の反応は…