蒲生とら

獅子の妹は虎

とらは昔から兄に憧れていた。いや、言い方が悪い。……昔から、兄が憎かった。男の兄が憎かった。もしも兄を殺して自分も死ねば来世は男に産まれられるというのなら、とらは喜んで兄を殺して自分も死ぬだろう。それくらい、男である兄を、そして女である自分…

鶴の見るもの

与一郎は知っている。すべてではないが、それに近い何かを。彼から届けられたものを全て眺めたところで与一郎は溜息をつくと、舌打ちをして側仕えの若手を追い出した。乾いたはずの体がまた汗をかいている。忌々しげに拭ったが居心地の悪さは拭いきれない。今…