細川ガラシャ

きれいな石の恋人

思えば自分を見つめるあの黒い目は黒曜石でできていると思う。真珠でできた肌の下、手の甲から腕に広がる血管は翡翠でできているのではないだろうか。そしてそこに流れている血は柘榴石がひときわ赤く輝いては溶けているのだ。そうだと思うと合点がいく。この…

汝、まだ名もなき毒

光秀と関係する以上、彼の娘である珠子を抱けなくなるのではないかという畏れもあった。しかしその心配は杞憂だった。何故か珠子への欲情は消えなかったどころか、むしろ興奮さえした。それが彼女の実父に対する歪な欲望であったのことは間違いないだろう。し…

【R18】雲を霞と、散りうるもの

「教えを棄てないのならばここで死ね。それすらも拒むのならば、お前の目の前で子供たちを一人ずつ殺す」それは自分でも笑ってしまうくらいの稚拙な脅し文句だった。こんなことをしたところで、彼女の父親は変えられないし、それらに惹かれる忠興が変わるわけ…

汝聖母なりや

鏡を愛しているようなものであった。珠子は自らの夫である与一郎を、珠子と同じだと思っていた。いや、珠子自身だと思っていた。髪の色も、肌の色も、同じに見えていた。抱き合って混ざると、どちらがどちらのものだかわからないほどだった。それが嬉しくて、…