Hail to a father of divine,To the son the light will shine.
北に向かう雁を見ていた。彼らの終わりを見届けることは叶わない。遠くなる黒い影は空に吸い込まれるように小さくなり、やがて見えなくなった。弟の死というものは、えてしてそういうものだった。彼が死んで一年がたつが、今も彼の真意を全て知ることはない。…
兄弟,徳川家光,徳川忠長,歴史創作
没ネタ
そういえば、忠興には心当たりはあった。ある時光秀に声をかけられ、振り返ると……彼はとても悲しそうな顔をして、こう言った。「いや、なんでもなかった。すまない」そんなことが幾度かあった。気にしないようにしていた。いつも彼はどこか寂しそうに、泣き…
明智光秀だったはずの妖怪がなんやかやあって細川家を籠絡する話創作戦国,明智光秀,歴史創作,細川忠興
山の井戸
互いに清い人間ではなかったと思う。長益は隠居し、有楽と名乗り、しばらく何もないことを楽しんでいた。周りは長益を良くも悪くも放っておかなかったが、時々何もない日があっては、思い出すのはけして清くはなかった連れ合いの話だ。不思議な男だった。別に…
古田織部,歴史創作,織田有楽
濁れる水を
ある時、江戸から離れない藤堂高虎を細川忠興がこう笑ったと言う。「和泉のたわけが、江戸の凝った水など飲んでいられるか」人の噂とはまことに勝手なものだ。人と人の間の水を好きに泳いでは、姿を変えるのだ。受取手の都合の良く形を変えに変えて、たどり着…
SS,創作戦国,歴史創作,細川忠興,藤堂高虎
滅びゆく者には愚かな言葉
忠興はそれから暫く体調を崩した。もとより体は強くはない。臥せっている彼を心配して何人か見舞いの使者が来たが、会いたくないので帰した。本当に誰にも会いたくなかった。そんな忠興が、会わざるを得なかったのが蒲生氏郷だった。氏郷は自らやってきた。だ…
明智光秀だったはずの妖怪がなんやかやあって細川家を籠絡する話創作戦国,明智光秀,歴史創作,細川忠興,細川興秋,蒲生氏郷
【R18】ひたかくし
ぱちゅ、ぱちゅ、と卑猥な音を立てて体のぶつかる音が微かに響いた。必死に声を殺しているが、最近なぜか声を我慢することが出来ず、後で肝を冷やすことが増えている気がする。「ん、ん……っあ、あっ」与えられる快楽を吐息に込め、忠利の体をぎゅっと抱きし…
加賀爪忠澄,歴史創作,江戸幕閣,細川忠利
うずらと不思議な孤児の話
「鶉を全て手放したそうじゃないか」信綱の言葉に忠秋は顔を上げた。仕事中に珍しく雑談を振ってきたと思ったが、その内容だって仕事がらみだから特段忠秋を面白がらせるものではなかった。彼の言う通り、忠秋は先日まで大量に飼育していた鶉を手放した。自ら…
松平信綱,歴史創作,江戸幕閣,阿部忠秋