目覚めたままのからだ
「只今戻ったばかりで草臥れているとは思うが、なんとなく淋しいので、今すぐ来てほしい。昨晩も来てくれなかったので、今夜は必ず来てほしい」利勝はその手紙を見てため息をついた。この筆跡の持ち主は、普段私的な手紙を利勝に寄越すことなどほとんどない。…
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小火の炉
「私相手では面白くはないでしょう」長い仕事がようやく終わり、少し話し込むきっかけがあった。信綱は利勝が酒を用意するのを見て、素直に眉根を寄せそう言う。晩冬、まだ寒さの抜けきらぬ夜の事、利勝は笑いながらぬるく温めた酒を口に運ぶ。信綱は酒を呑ま…
江戸初期幕閣BL,SS,土井利勝,松平信綱,柳生宗矩,歴史創作,江戸幕閣
無配
元々、甚三郎はこの家の子ではない。物心ついた頃にはもう土井家にいたが、元を辿ると水野家で生まれたと言う。しかし実際には甚三郎の父という人は水野家にはいなかった……らしい。皆が甚三郎の父はかの家康様だと噂する。容貌や話し方がよく似ているそうで…
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誰でもない水面
「好い香りがする」ふっと香ったその香りはどこかで知った香りな気もしたが、それがどこかは思い出せなかった。何故か安心感だけがふわふわと漂っている。利勝はすんすんと香りをたどり、それが宗矩から香っていることに気がついた。「何か焚き込めているのか…
江戸初期幕閣土井利勝,幕閣本1巻,柳生宗矩,歴史創作,江戸幕閣
てほどき
彼が自分にとって何者かなんて知っている。人々の無責任な噂の中には彼の出自を仄めかす類のものがあったし秀忠の耳にももちろん入ったが、おそらくそれらを知る前から直感的に理解していたと思う。彼は兄だ。それも他の兄弟たちとは違う特別な兄だ。墨で塗り…
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