東京は夜の1時

☆前回のあらすじ☆
いつの世も悪は絶えない。
C.E.でわりとやらかしたラウ・ル・クルーゼが死罪の次に重い(江戸時代基準)遠流罪に処され2年。一方その頃プラント最高評議会は、ギルバート・デュランダル議長の遠流処分を満場一致で可決した。彼もまた遺伝子関連で盛大にやらかしたためだ。しかし才色兼備のデュランダル議長はただ黙って流罪に甘んじるつもりはなかったのである……。
これはラウに無許可で同棲をおっ始めたギルバートの世界に対する反逆であり、特に鬼平犯科帳とかは一切関係ない。火付盗賊改方のクルーゼはいないし悪代官のデュランダルもいない。見たい。誰か描いて。書いて。
……この話は、現代日本の東京(多摩地域)に流刑された二人のちょっとすけべな物語なのである……

ラウと共に暮らすのは初めてではない。
一応、彼はギルバートの家に『帰って』来ることもあった。だが、それは過去の話。当時のラウは軍人で家を空けることも多く、ギルバートも研究や政務で忙しく、レイがいることを除けば、ただ生活の場を共有しているという側面も大きかった。
少なくとも、こうして二人で暮らすなんて考えたこともなかったわけだ。
昔は互いに間が合えば体を重ねていた。トップもボトムも、どちらもした。ギルバートなりに「ラウが帰る場所」への理由付けになると思って、本当に心の底から言いたいことにも蓋をするように……肌を触れ合わせていた。
しかし今はどうだろうか?
ラウは刑務ついでとあちこちで働いている。頭脳労働が封じられた時点でギルバートにできる労働はないに等しいため、こちらは家にいることが多い。当局に許可をとって配信などもしている。当初は物珍しさや罪人であるという立ち位置から冷ややかな反応も多かったが、何度か配信をしているうちに皆ギルバートに慣れたのか、むしろ親しげにコメントをしてくれるようになった。彼らは言葉のチョイスが辛辣な気もするが、それはそれで反応しやすくて楽しいものだ。話し方も以前より少し柔らかくくだけた風に変えた。それも良かったのかもしれない。
昼の少しの時間、見知らぬ誰かとやり取りをしながら、この国のことを少しずつ知っていった。夕方になるとラウが帰ってきて、食事を共にして、他愛もない話なんかしてしまう。
人間らしく暮らすこととはこういうことなのかとも思う。不満はない。
ただ、ひとつどうしても乗り越えねばならないことがあった。
ギルバートはラウと、まだセックスをしていない。ほっとしたからなのかわからないが、最近少し体が疼くような気がしている。でも言えていない。
しがらみの消えたラウは綺麗で、頼もしくて、元々ギルバートが彼に燻らせていた感情を増幅させるには十分だった。しかしラウが拒むのだ。もういいだろう、とさえ言ってくる。
ラウと暮らしたかったのは、安らかさの中に互いに愛情があると確信していたからで、ラウも口では文句をいうがけしてギルバートを邪険にはしない。しかし、ギルバートが昔のように誘ってもラウは……まるでぐずる子どもをあやすように……ギルバートに触れはするものの、肝心のセックスに至らない。
26歳とはそういうものなのだろうか。自分にも当然26歳だった頃はある。いや待て、時間のズレがあったはずだな…そうだとしても当然その年代は経験済みだ。
ギルバートは、人並みに人肌恋しいことがたびたびあった。政治的にのしあがる以外の理由でも人と閨を共にすることもあった。ラウはどうなのだろう。かつての夜の様子を思い返しても、そんなに淡白には見えないし、むしろ軍務明けなどは荒々しくギルバートを抱いてさえいた。
大体、ギルバートがここにくるまでに2年ほどのブランクがあるはずだ。どうしていたというのだろう。気になって仕方がない。
「……どうすればいいんだろうか」
ポツリとこぼしてから、あ、配信していたと気がついた。コメント欄がざわつく。
『どした』『悩み相談かー?』『脱獄以外ならなんでも手伝うゾ』
リスナーたちががわいわいと騒ぎ始める。
どう説明したらいいだろう。彼らには流石にラウとの関係を明かしていない。いや、仄めかしてそれなりにコメントと投げ銭を稼いだことはある。配信のアナリティクスを見た時に意外と女性リスナーが多いことを知ったので、試しに『彼とは特別な関係だからね』なんて言ってみたのだ。この国は女性の躍進が遅いようだから、きっと平日の昼間でも女性は家にいるものなのだろう。
まあ、一番額面の高い投げ銭をしたリスナーは男性名だったが……。
「うーん、その……相談といったら相談かな。恋愛相談だけれど」
その瞬間、タイピングの早いリスナーから順に容赦ないコメントが投げられる。ついでにその高額投げ銭リスナーも無言で投げ銭を送ってきた。額面1万円。ここで生活をするうちにやたら所帯じみてきたラウが見たら怒りそうだなぁと素直に思う。
『はい解散』『俺たちには無理だ』『顔でなんとかしろ』
コメント欄はいつも辛辣だなぁ、と笑っていると、一人のリスナーがこんなことを言いはじめた。
『えっでもギルちゃん、一緒に暮らしてるの、あの……人……だよね…!?!?!!!」
おそらくこのリスナーは女性だろう。
一人のおとめのコメントが、コメント欄を一気に沸かせた。まるで革命でも起きたかのようだった。
『つまりラウ…と!?』『えっそれは聞いていい話なのか』『したら怒られない?』『◎リカルドさんから3万円の投げ銭が届きました◎』『石油王ニキによるご祝儀www』
彼らが先ほどまで恋愛話を避けていたのは、どうせ詳しく話すことはないだろうと言う防御反応だったのかもしれない。
「うん。彼とは昔からずっとそう言う関係だよ。だけどここに来てからつれなくてね。困ってる」
だから言ってしまった。言った後で、どう言う関係なんだろうと自分で思った。恋人、家族……?どれもしっくりこない。当然ただのセックスフレンドではない。
ギルバートも最近まで知らなかったが、ラウがこの地に流刑とされた時、一部メディアが『美しすぎる大逆者』として報じたため、ネットを中心に彼の名前と顔は有名なのだそうだ。それはそうだろう。この国で一番美しい顔をしているのだから。
『で、その美しいラウ様に袖にされてギルちゃんはマヂ病みってことか』
「そこまで追い詰められてはいないよ。ちょっとアイコンを黒背景にしようか悩んだくらいで…」
『しっかり病んでるじゃねーか』『ヤンデレ元議長、これは売れる』『夏コミが楽しみですね』『◎リカルドさんから1万円の投げ銭が届きました◎』
そうして話していたからか、ギルバートは気が付かなかった。隣の……廊下の向こうで鍵が開いた音を。
「でも、これ以上私から無理強いして誘うのも変じゃないかな…」
そんなことを話していた時だった。後ろの扉がガチャリと開く。
「おい」
「あれ、帰ってたの」
『キタ!!!』『び、美人…』『ラウ様だ』
リスナーたちが大騒ぎを始めるが、振り返ってラウと話しているギルバートには見えていなかった。当然、その時のギルバートの表情がどのようなものであったか、リスナーは知ることもなかった。
「何をやっているんだ」
「これ?ネット配信だよ。みんなとこうやって話せるんだ」
「……君は自分の立場が果たして本当にわかっているのか?」
ラウのこめかみがひくついている。配信はラウには秘密で…というか、規制事実を作り実績さえ出せば文句は言わないだろうと思って始めたのだ。ここに来て、ラウには多少保守的なところがあるとわかった。だからこうして道を示すのも伴侶としての義務なのだと思う。
そんなことを話していた。後ろではコメント欄が『うわ』『無許可だったんだ…』『身勝手な言い訳で草』と流れているがギルバートには見えない。
ラウはため息をついてしばらく思案しているようだったが、やがてため息をつく。
「とりあえずその配信とやらを止めろ」

ラウとギルバートは部屋を分けている。当初はラウの部屋に勝手に入り布団に潜り込んでいたのだが、この日本という国は床に直接布団を敷く文化がある。軍人だったラウ曰く横になれるだけ僥倖とのことだが、ギルバートからしたら多忙を極めた研究者生活ですら床に寝るということは緊急事態である。
当局と掛け合って、隣の部屋をギルバートの自室とした上でベッドを置くことになったが、ラウはそのままだ。
今ギルバートはそのラウの部屋にいて、敷いてすらいない布団に転がされている。
つまり、緊急事態ということである。
「私に直接相談もせず赤の他人と乳繰り合っていたと?」
「誤解だよ、私はただ彼らと君のことを話していただけなんだ」
「それが嫌だとなぜわからないんだ」
昔……ラウが軍人で、ギルバートがまだ駆け出しの政治家だった頃、仕事相手に性的な接待をした末に首筋を噛まれたことを話した時も似たようなことが起きた。可愛い嫉妬だと喜んでいたら容赦なく抱かれた。ギルバートですらもう少し優しくして欲しいと思う程度にあまりにも容赦がなかった。
今ならあれでもいいからセックスをしたいと思っているのだが、ラウはギルバートを転がせたまま、懇々と説教を講じている。
「大体君が勝手にこの家にやってきて」
そうだ。罪人として住む家は提供されたが、当局に無理を言ってラウの家に住めるよう手筈した。それはラウを愛しているから。
「君は私の意思を考えたこともない」
それは間違いだ。常にギルバートはラウのために最短距離の正解を提示している。愛している人間のために最適解を出し続けるのが愛する者の努めだと思う。
「挙句に君はなんだ、私の私生活を他人に暴露したのか?」
それは……違う。打ち明けたのはギルバート本人の私生活だ。ラウと一緒に暮らしているから、その部分も確かに話したけれども。それだってラウに愛してほしくて、少しでも一緒にいたくてどうすればいいのかを他人に聞いたのだ。ギルバートにとって、色恋沙汰の悩みに他人の頭脳を借りるなんて考えたこともない取り組みだった。結果としてそこまで使えそうなものが多く寄せられたわけではなかったが、その中に一つ、これならしてもいいと思うものがあったのだ。
「……ラウ」
「なんだ」
「どうして私とシようと思わないんだい?」
「……君は……」
ラウがその美しい相貌を歪め、ギルバートの顎を取る。キスの一つでもされると思ったが、されない。なんだか急に悲しくなってしまった。どうしてこんなに近いのに遠いのだろう。コメント欄にあった言葉は、ラウに直接聞いたか?と訊ねるものだった。聞いたことがあるような気がしていたが、よく考えたらきちんと話し合ったことはなかったかもしれない。そう思って聞いた。
「ラウと私は確かに取引をしてこういう関係になったわけだけど、今はもうそれだけじゃないことは互いに十分わかっているじゃないか」
「ギル、君にはわからないのか?」
ラウはそう言って眉間に皺を寄せ苦しそうに目を細めた。どうしてそんな顔をするんだろう。もう彼は解放されたではないか。何もかも。ここにいるのは確かに贖いだけれど……。
「君は、幸せになるのが怖いんじゃないかな。確かにセックスなどしなくても幸せにはなれると思うけれど、私も君も望んでいるものに蓋をしても幸せは近寄ってこないんじゃないだろうか。ねえ、ラウ」
顎に触れられたお返しと言わんばかりに、ラウの頬に指を添える。こんな表情したっけと思ってしまうほど、あどけなかった。ラウは抵抗しない。でも、それを答えだと言うにはあまりにも寂しい。欲しい。ほしい。もっと。
ギルバートは貪欲で、負けず嫌いで……自分でも信じられないほど、素直なのだ。ラウが思っている以上に。
「君は私のことが好きかな。私は君のことがどうしようもなく好きなんだけれど」
「……ギル。君は本当にそれでいいのか?ここにいることを善いことだと、当たり前だと」
ラウの言葉が形良いくちびるからぽたぽたと落ちる。まるで切り傷から血が溢れるように、それらはギルバートの手のひらを染める。ああ、これでいい。ラウに染まりたい。
唇を求め久しぶりに触れるだけのキスをした。ああ、それだけでジンと体の奥が疼いて、たまらない。
「私は君がここにいればそれでいいよ」
「……君はもっと野心家で、強欲なのだと思っていた」
「私は欲深いよ。君が一番よく知っているだろう」
「ギル。………実は、それだけが理由じゃないんだ」
「……え?ぁ、ん、んっ」
たちまちギルバートはラウに唇や口腔内を蹂躙される。吐息が漏れるばかりで息ができないほど、突然でそれでいて激しかった。
「あ……は、ぁ」
「我慢を強いたのは悪かった。とはいえ私にも理由があるんだ…………加減ができない。ギルバート。君が昔、馬鹿なことをして私を揶揄った時に君を抱き潰したろう?あの時の君の寝顔といったら酷かった。殺してしまったんだと、罪を重ねたと私は確かに思ったんだ……今の私は……いや、今の私だからこそどうなるかわからん」
身に染みついた病に侵されていたときですらあれだったのに。今となっては何が起きてしまうのかわからない。ラウはそう語った。
なんて、なんて可愛いことを言ってくれるのだろうか。
「大丈夫」
そう笑ってラウの体を引き寄せる。ラウには言わないがこちらだってしがらみから離れてどうにかしてしまいそうなのだ。
ならば、一緒におかしくなろう。
「手加減しないで。ラウが全部欲しい」
「……君は……」
強欲だな。
そう言ってラウはギルバートの素肌に指を這わせた。

……かつてのラウは、豊かな肉体の甘美の中に冷え切った眼差しを湛えた、どこか引っ掛かりのある美しさを持つ男だった。急速な老化に翻弄される体とそれについていけない精神というアンビバレントな状況は、ラウの望まぬ形で美しさとして発露していたのだと思う。
ギルバートは彼のそういう、どこかねじれを生じさせたさまに愛おしさを覚えていたはずだった。
今はどうだろうか。それらから解放されたラウは良い意味でふつうになった。そこにねじれや澱みはなく、清流の行き着くところのような目の色をしてギルバートを見る。
もしかしたら、ラウを知ったばかりのギルバートであれば、こうした彼の様子に多少の物足りなさを感じていたかもしれない。
しかし人間とはそこまで合理的には生きられないのだ。今であれば少しはわかるが、合理的ではないからこそギルバートもラウも失敗したのだ。そこにあったものは、自らへの過信以外のなにものでもない。結局二人とも、孤高な野生動物にはなれなかったのだ。獣の如く合理のみを理として生きることは、人間である以上叶わなかった。神の存在をギルバートもラウも鼻で笑って語るが、それこそきっと神の領域なのだろう。
人間として、ギルバートはラウへのどうしようもない執着に、恋慕に気がついたのだ。彼の見る世界が欲しいと、彼の話す世界が欲しいと、わがままなギルバートの人間としての欲求がそれらを我慢することはほぼ不可能であった。
そんなことを考えていた……はずであった。
「あっ……ラウ、あ、ア」
久しぶりの行為は、ギルバートの体を塗りつぶしてあまりあるものだった。
「ギル……ッ」
準備していたはずなのに、時には自らを慰めて泣く夜もあったのに、待ち焦がれていたはずなのに。快楽の激流のなかでは言葉などというものはとうに意味をなさず、余韻を味わう暇もない。
「ん、ンッあ、はげ、し…っ」
後ろから容赦なく突かれ、かき混ぜられる。腰を掴むラウの指先の熱さや力強さがたまらない。ラウの体を感じるたびに全身にびりびりと電流が走るようだ。
「ひッ…ァ」
散々正常位で抱かれたし、疲れたと訴えれば座位でゆっくりと、しかししつこく求められた。そして疲れも癒えたろうと言わんばかりに今度は後ろから交わっている。そうだ。そうだった。昔もこうされたのだ。
あれだけラウとの行為を望んでいたはずなのに、思わず体が逃げてしまう。
「も、ゃ……アッ!?」
「逃げるな、ギルバート」
腿を掴まれ、思い切り引かれる。思わずベッドに上体を伏せてしまった。ラウの雄を締めたのだろう。く、とラウの喉奥が鳴る。自分の反応で気持ちよくなっているんだという事実にじわと胸の奥が熱くなりかけたが、ラウがそのままギルバートに体重をかけるように捻じ込んできた。
「ア、アッ……お、く…ッだ、め、やっアッ……!」
きゅんきゅんと全身が性感帯になったようだ。しばらく触れ合ってなかったのが嘘のように、ぴたりと互いの足りないところを埋めていく。互いに何度も絶頂したと思う。もう数え切れないほどだった。

「ん……」
「痩せたな」
気がつけばもう日付が変わろうとしている。
ギルバートの腹や腿を撫でながら、ラウがそう嘯いた。確かに、痩せたかもしれない。
外に出る機会もそうそうないし、もともと体を動かすのは苦手ではないが好きでもない。この世界の本でも読んでいた方が楽しいし、最近はそれこそ配信もしているから余計に動かない。
ギルバートもお返しとラウの脇腹を撫でた。彼もまた軍人時代より痩せだろうと勝手に思っていたが、ジム通いを許可されているようで、むしろ以前より少し筋肉がついたようだ。今はギルバートに気を許し弛緩しているため柔らかい。
「君と毎日こうしていたら少しは筋肉がつくかもしれないよ」
「私は構わんが君が構うだろう」
「そんなこ……っん、ん」
胸元に指を滑らされ、思わず声が漏れてしまった。しばらくシていなかったせいだと思いたいが、これだけで声が出るのは些か不本意だ。
「私のいぬ間に快楽に弱くなったんじゃないか」
ラウはそう笑いながら、敏感な乳首を摘みすりすりと扱くように撫でる。もう終わったと思えばこうなのだ。ラウはギルバートが泣いてもう嫌だと言うまでこういうことをしてくるしつこい性分を持っている。それも好きだ。言葉には出さずとも、食らいついて離さないその態度が全てだ。
「あ、ぁ」
思わずのけぞり首筋を晒してしまう。ラウはそこに唇を寄せ、耳元で囁いた。
「ところで配信の話だが」
「えっ……あ、なに?」
「勝手に私の名前を出すな。君が私の名前を呼んでいるところを他人に見られるのは些か腹が立つ」
「…………妬いてるのかい?あ、ちょっと、ひゃ、ぁッ」
本当にこういうところがラウの可愛らしいところなんだと喜ぼうとした瞬間、ギルバートはラウに乳首をつねられ、びくりと体を跳ねさせる。
ずっと優しく擦られていたところに急に与えられた刺激で、不甲斐ないことにあっけなく絶頂させられてしまった。胸だけで達した経験がないわけではないが、悔しい。弄ばれた気分になる。
「ラウ……も、もう」
「もう?」
まだ快楽の余波の残る体を撫でながら、勝ち誇るようにラウはギルバートの答えを待つ。
「もう一回……シてくれないか」
それを聞いたラウは呆れるように笑うと、再びギルバートと体を重ねた。

翌日。
「今日は何の話をしようかな。あっそういえば当局に許可をとったから遺伝子関係の話もしていいらしいよ」
配信をウキウキと始めたギルバートがそんなことを話していると、昨日の不穏な終わり方をしたことをいまだに引きずっているリスナーたちがこんなコメントをしてくる。
『大丈夫だった…?昨日…』『ラウ様めちゃんこ怒ってた』『怖かった』『出てかれてない?』
「アハハ、ラウは恥ずかしがってただけだよ。それに色々話したら解決したから大丈夫。心配しないで」
『つまり…ヤってまったってことーー?!?!』『おめでとう』『◎リカルドさんから5万円の投げ銭が届きました◎』『石油王ニキ元気だな今日も』
沸くコメント欄に、ギルバートはニコニコと笑う。
また困ったら彼らに聞いてみるのも悪くないかもしれないな、そんなことを考えていた。東京は昼の1時。今日も2時間ほど雑談して、ギルバートはラウが帰ってくるまでを待っている。

2025年8月12日