ガンダムSEEDみりしらシリーズ

地に降りて、幾許 4

ギルバートが初めてこの地に降りて1ヶ月が経つ。まだまだ昼間は暑いが、夜になると冷えるようになってきた。この日もキリサキは眠っているギルバートの様子を見に行った。角部屋は窓部分が広く、日没の金色の輝きを赤い空がしっかりと抱いているのがよくわか…

地に降りて、幾許 3

ああ、人々の魂の溶け合う場所……ギルバートは白波に歯向かうようにそこを目指して歩いて行く。素足が沈み込む時、このまま彼らの元へと還る喜びすら感じられた。ああ、待っていてくれ……私は……。気がつくとギルバートは、何事もなかったように自宅の書斎…

地に降りて、幾許 2

夜空が見える。カーテンを閉めずに、ギルバートはベッドに横たわっていた。眠ってしまいたい欲求を、かき消して余りあるほどに、えもいえぬ恐怖心がぞわりぞわりと近寄ってくる。……眠る瞬間に世界が真っ暗になってしまうのが、どうしても耐え難かった。眠っ…

地に降りて、幾許 1

⁠オーブに身柄を移され、最初にギルバートと接見をしたのは一人の女性医師だった。銀の色をした髪を粗雑に束ねただけで化粧っ気もない彼女を、かつての自分であれば、つまらなさそうな女だと一蹴したかもしれない。当時の感覚はもはや遠い。断片的にある知識…

薔薇の名は不二

いつの時だったかわからない。ただ、その時が来たことだけは確実に覚えている。時のない光の中、彼が幸福と名づけた庭の隅でラウ・ル・クルーゼはある決意をした。それはギルバート・デュランダルという存在を変えてしまった責務や、彼がもたらした世界に愈々…