木ごとの花
「彼もまた、私のために死んだ多くの子どもたちのひとりなのでしょう」ギルバートは静かにそう話し始めた。安いコーヒーの香りが漂う部屋の中、窓の外はとっぷりと暮れ、仄かに残った黄昏の中に確実に存在する闇がこちらをじっと見つめている。ギルバートがこ…
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【修道女パロ】絵の中の女
好きになった女に近づくために酒を飲むことを覚えたし、好きになった女を忘れるために煙草を喫むことを覚えた。修道女ラウ・ル・クルーゼのそう言った行動を、周りの修道女たちは煙たく見ていた。そうでなくてもラウは目立つのだ。街で彼女を見失うことはまず…
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とある男の敗北手記
知の野生児だ。これが、私がギルバート・デュランダルの様子を初めて見た際に覚えた率直な感想である。当時の彼はまだ10歳かそこらで、背も伸び切らぬ少年であったはずだ。しかし彼はその時点で自らの教育をすべて終わらせており、オブザーバー研究員として…
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海辺に咲く薔薇は根を持たない
「ラウ」名前を呼び唇を寄せ、この男はラウから体温を奪う。ギルバートは愛情に飢えた子のようにラウの体に組みついて散々キスを浴びせているが、与えるためのキスではない。こうして彼と寝るようになってしばらく経つが、この男はラウの想像をはるかに超える…
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ある立ち飲み屋での政治放談
「あれはどうかと思うんだよ」ギルバートの耳にそんな言葉が入ってきたのは、夜の盛場……スタンドバーといえば聞こえは良いが、安酒を提供し労働者たちのガス抜きとして用意された、場としての価値の方が高いようなバーだった。本来は違法だろうが、おそらく…
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SWEET SURRENDER
「どうして殴られたかはわかるか?」目の前には美しい女がこちらを見下している。一矢纏わぬ均整のとれた体を怒りに震わせ、その目は侮蔑の色を隠すつもりもないらしい。つい8秒前、ギルバートはこの女に殴り飛ばされた。一人で使うには広いベッドだから多少…
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リカルドが帰った後に起きること
ナージーは捨てられた子だ。母はナージーの父である男に犯されて身籠った。母はそのことを多くは語らなかったが、戦争が引き起こしたことなのだろうということは知っていた。母とその夫は敬虔な信仰者であり、ナージーの存在を受け入れることには多大な犠牲を…
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Fanatic Love
彼は、特別だった。初めてその姿を見た時のことは忘れない。リカルドはその時まだ20歳そこそこで、ごく平凡な暮らしをしていた。コーディネイターだが特段優れた何かを持つわけでもなく、人並みに自分と他人を比べては落ち込み、とはいえ仕事に打ち込めるわ…
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眠りたいもう眠りたい
望んで得た力ではない。もう死ぬとわかって戦いに臨んだのは、たとえ周りを巻き込んででも全て終わらせようと本当に思ったからだ。もちろん、逡巡もあった。しかし、生きたまま人としての性を燃やし続けることがどうしても耐えられなかった。その頃はまだ自分…
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とある男の敗北手記
知の野生児だ。これが、私がギルバート・デュランダルの様子を初めて見た際に覚えた率直な感想である。当時の彼はまだ10歳かそこらで、背も伸び切らぬ少年であったはずだ。しかし彼はその時点で自らの教育をすべて終わらせており、オブザーバー研究員として…
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海辺に咲く薔薇は根を持たない
「ラウ」名前を呼び唇を寄せ、この男はラウから体温を奪う。ギルバートは愛情に飢えた子のようにラウの体に組みついて散々キスを浴びせているが、与えるためのキスではない。こうして彼と寝るようになってしばらく経つが、この男はラウの想像をはるかに超える…
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地に降りて、幾許 5
翌週、ギルバートは昼過ぎに書庫に向かい約束通りウシオに勉強を教えることになった。彼女の理解度を知るために、一度資料を見ずにこちらの質問に答えてもらうことにした。簡単な身体構造などは頭に入っているようだ。「今、働いているところは内科で……あの…
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