とある男の敗北手記
知の野生児だ。これが、私がギルバート・デュランダルの様子を初めて見た際に覚えた率直な感想である。当時の彼はまだ10歳かそこらで、背も伸び切らぬ少年であったはずだ。しかし彼はその時点で自らの教育をすべて終わらせており、オブザーバー研究員として…
ガンダムSEEDみりしらシリーズ
海辺に咲く薔薇は根を持たない
「ラウ」名前を呼び唇を寄せ、この男はラウから体温を奪う。ギルバートは愛情に飢えた子のようにラウの体に組みついて散々キスを浴びせているが、与えるためのキスではない。こうして彼と寝るようになってしばらく経つが、この男はラウの想像をはるかに超える…
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地に降りて、幾許 5
翌週、ギルバートは昼過ぎに書庫に向かい約束通りウシオに勉強を教えることになった。彼女の理解度を知るために、一度資料を見ずにこちらの質問に答えてもらうことにした。簡単な身体構造などは頭に入っているようだ。「今、働いているところは内科で……あの…
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地に降りて、幾許 4
ギルバートが初めてこの地に降りて1ヶ月が経つ。まだまだ昼間は暑いが、夜になると冷えるようになってきた。この日もキリサキは眠っているギルバートの様子を見に行った。角部屋は窓部分が広く、日没の金色の輝きを赤い空がしっかりと抱いているのがよくわか…
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地に降りて、幾許 3
ああ、人々の魂の溶け合う場所……ギルバートは白波に歯向かうようにそこを目指して歩いて行く。素足が沈み込む時、このまま彼らの元へと還る喜びすら感じられた。ああ、待っていてくれ……私は……。気がつくとギルバートは、何事もなかったように自宅の書斎…
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地に降りて、幾許 2
夜空が見える。カーテンを閉めずに、ギルバートはベッドに横たわっていた。眠ってしまいたい欲求を、かき消して余りあるほどに、えもいえぬ恐怖心がぞわりぞわりと近寄ってくる。……眠る瞬間に世界が真っ暗になってしまうのが、どうしても耐え難かった。眠っ…
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地に降りて、幾許 1
オーブに身柄を移され、最初にギルバートと接見をしたのは一人の女性医師だった。銀の色をした髪を粗雑に束ねただけで化粧っ気もない彼女を、かつての自分であれば、つまらなさそうな女だと一蹴したかもしれない。当時の感覚はもはや遠い。断片的にある知識…
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薔薇の名は不二
いつの時だったかわからない。ただ、その時が来たことだけは確実に覚えている。時のない光の中、彼が幸福と名づけた庭の隅でラウ・ル・クルーゼはある決意をした。それはギルバート・デュランダルという存在を変えてしまった責務や、彼がもたらした世界に愈々…
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ある日突然友人の体が女になったラウの受難
「最近風邪気味でね」言い訳としては最悪な文句だ、とラウは思った。風邪を引くのは悪いことではない。人の防御反応が正しく働いている証左だ。一方でそうならないように努めるのも人の仕事のうちだ。戦争と同じで、防御部隊をいかに出さずに戦いを終わらせる…
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