茶人

二人して俺になんの恨みがあるんだよ、と与一郎は言ったそうです

その日与一郎は苛立っていた。出かける用事が先方の都合で急になくなり、届くはずの手紙は届かず、手慰みで削り始めた作りかけの茶杓は盛大に手元が狂ってだめにしてしまった。そういう日もあるだろうと楽観的な人間ならば思えるのだろうか。与一郎にはそうい…

椿と芙蓉の恋

長益は初陣の際、戦とは関係のないところで馬から落ちて怪我を負った。このことは周りの人間を呆れさせ、それなりに失望もされたのだが、その後は彼の人柄もありなんだかんだ笑い話になっている。長益は一見口少なさそうな男に見えるが、話すと適度な毒をもつ…