生存if

正しい涙

初夏の日差しが寺の縁側に腰掛ける忠三郎を容赦なく照らした。新緑の影が淡くなっては浮かび濃くなっては沈んでゆくのを、じっと見つめてはため息を漏らす。「あまり外にいてはこの暑さは毒になりますよ」そう言って茶を持ってきたのはここの僧侶だ。もう十年…

Crossroad

「どうして」この国を出るまであと僅かとなった夜明けごろ。すべてを捨て、すべてを遺してここを後にしようと、方々に形見分けを済ませ、海に浮かぶ朝日を眺めに外に出た右近はその姿を見て、思わずそう口走ってしまった。目の前に広がる深い海のような色の目…