目覚めたままのからだ
「只今戻ったばかりで草臥れているとは思うが、なんとなく淋しいので、今すぐ来てほしい。昨晩も来てくれなかったので、今夜は必ず来てほしい」利勝はその手紙を見てため息をついた。この筆跡の持ち主は、普段私的な手紙を利勝に寄越すことなどほとんどない。…
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無配
元々、甚三郎はこの家の子ではない。物心ついた頃にはもう土井家にいたが、元を辿ると水野家で生まれたと言う。しかし実際には甚三郎の父という人は水野家にはいなかった……らしい。皆が甚三郎の父はかの家康様だと噂する。容貌や話し方がよく似ているそうで…
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てほどき
彼が自分にとって何者かなんて知っている。人々の無責任な噂の中には彼の出自を仄めかす類のものがあったし秀忠の耳にももちろん入ったが、おそらくそれらを知る前から直感的に理解していたと思う。彼は兄だ。それも他の兄弟たちとは違う特別な兄だ。墨で塗り…
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