古田織部

椿と芙蓉の恋

長益は初陣の際、戦とは関係のないところで馬から落ちて怪我を負った。このことは周りの人間を呆れさせ、それなりに失望もされたのだが、その後は彼の人柄もありなんだかんだ笑い話になっている。長益は一見口少なさそうな男に見えるが、話すと適度な毒をもつ…

山の井戸

互いに清い人間ではなかったと思う。長益は隠居し、有楽と名乗り、しばらく何もないことを楽しんでいた。周りは長益を良くも悪くも放っておかなかったが、時々何もない日があっては、思い出すのはけして清くはなかった連れ合いの話だ。不思議な男だった。別に…